斉藤孝  カメのブログ

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澤井 清 アナログレコードの魅力 ーグラフィックデザイナーデヴィッド・ストーン・マーチ ンの LP 2022年7月

アナログレコードの魅力 

グラフィックデザイナーデヴィッド・ストーン・マーチンの LP

    2022年7月  
             澤井  清

1.はじめに
 前報では、Blue Note アナログレコードジャケットの魅力について紹介した〔1〕。今回はデヴィッド・ストーン・マーチンーのジャケットについて紹介する。
 今から、15年程前イギリス生まれのジャズ評論家・DJ の「ピーター・バラカン」と「今村知子」の WOWOW ジャズ番組「Jazz File」を初めて見た。その際テーマミュジック「Laura」の魅力に惹かれた。どうもチャリー・パーカーの演奏らしい。チャリー・パーカーのサックスに「ウィズ・ストリングス」を加えた、切なさと優雅さを併せ持つた、華麗で情緒的なサックスの演奏にのめり込んだ。まずは、この Laura をお聴き下さい。

    

 出典 https://www.youtube.com/watch? v=mmm9u8dPU4A

 どうしてもこの曲の収録された CD が欲しくなり、探し求めた。現在なら、YouTube で即検索可能であるが、2007 年当時は未だ You Tube は出現したばかり。即、見つける事は困難であった。幸い仙台の HMV 店で、偶然 Laura が収録された 1995 年米国 Polygram Records Inc 発売の「Charlie Parker with Strings: The Master Takes」の CD 版を入手することができた。
   このCDのジャケット、今まで見たことの無い従来のCDやLPジャケットの顔写真や風景とは異なる、鳥をイラストに用いた秀作ジャッケト。ジャケット右下段には、作者のDavid  Stone Martin (DSM)<デヴィッド・ストーン・マーチン>名が記載されている。
興味深く思い、デヴィッド・ストーン・マーチンを調べると、LP レコードの黎明期に活躍した著名なシカゴ生まれのグラフィックデザイナーとのことである。DSM のジャッケットの多くは、楽器をはじめ、音楽を示すモチーフが必ず入っている。例えば Parker のジャケットでは、彼の仇名が「バード」 であることから Charlie Bird であることとかけて、鳥が集う中でサックス姿が描かれている。

中には”泥酔”した鳥や”ハイ”になった鳥もいる。まさしく Parker の真実の姿を象徴している。この CD はオリジナル・アルバムではなく、ストリングスと共演した複数の作品をまとめたコンビレーション・アルバム。
録音当時に別々のアルバムとして発売された作品を 1995 年に再構築された。24 曲が収録され、全て 3 分前後の短いものばかり。ストリングスが加わったことで、スローな曲調の物が多くなり、演奏の雰囲気もロマンティックに感じられる。Laura をはじめ、Just Friends、April in Paris、Summertime、Dancing in the Dark、East of the Sun(and West of the Moon)等お馴染みの曲が収録され、大変聴きやすいお勧めの CD である。

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CD: Charlie Parker with Strings : The Master Takes 1995
PolyGram Record Inc. 右下には DSM のサインが記載。

 なお DSM については、1991 年グラフイック社から
「ジャズ・グラフィックス ーデヴィッド・ストーン・マーチンの世界」という図書が発行されている。

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『ジャズ・グラフィックス ー デヴィッド・ストーン・マーチンの世界』マネック・デーバー/編 1991年2月 グラフイック社 ISBN 4-7661-0574-5    〔2〕
 現在絶版中。ここで本書の代表的なイラストを紹介する。

78p 掲載 Charlie Parker のイラスト

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92p 掲載 Billie Holiday のイラスト

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105p 掲載 Toshiko Akiyoshi のイラスト

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2.David Stone Martin(DSM) <デヴィッド・ストーン・マーチン>とは

 デヴィッド・ストーン・マーチンは、1913 年 6 月 13 日長老派の牧師の息子としてシカゴに生まれた。シカゴの学校時代、生来の絵の才能を速やかに発揮し、学校新聞に風刺絵などを描いた。学校は彼に画才があることを認め、シカゴ美術学校の奨学金を与えた。16 歳までに DSM はプロのイラストレーターとしての道を決め、家族も高等学校も全面的にそれに賛成した。

1935 年シカゴ美術学校を卒業後、ウェスターン・イリノイの連邦アート・プロジェクトの監督等を務めた。 ジャズ・グラフィック作家としての DSM は 1944 年である。彼は、当時著名なピアニストのメーリー・ルー・ウィリアムの 78 回転 SP 盤のアルバム「Mary LouWilliams Torio」の 3 枚組みジャケットをはじめて手掛け親交を結んでいた。

はメーリーの紹介もあり、アツシュ・レーベルのオーナー「モーゼス・アッシュ」に気に入られ、レーベル全てのアルバムアート・ディレクターに任命された。その後、Verve レコードのオーナー「ノーマン・グランツ」と関わり創世記のアート・ディレクターとして活躍。彼は当時出現した新しい長時間録音可能な 10 インチ(25cm)LPでその才能を発揮した。

 1960 年代以降は、『タイム』誌の表紙のイラストレーターの一人として活動。
DSM の描いた表紙には「ジョージ・ウォレス」「毛沢東」「ホー・チ・ミン」「毛沢東の妻(江青女史)」などがある。

70 年代になると、『タイム』誌は表紙をイラストから写真への変更を止むなく認め、DSM と他の作家たちの「表紙原画」全てを、スミソニアン研究所のポートレート・ギャラリーに寄贈した。その後、ブロードウェイショー 50 本のポスターとプログラムのデザイン担当。映画用としては DSM「Paint Your Wagon」「ジェムス・ディーン物語」「足ながおじさん」などのクレジットタイトル(出演者、制作スタッフ・スポンサーなどの名前を示す字幕)を作製。TV ショーについては枚挙にいとまがない。
  だが、彼が最も愛したのはジャズレコードのカバーの仕事であった。アッシュ、グランツはもとより、ダイアル、グランド・アウフォード、メアリ、プログレッシブ、アトランティック、RCAレーベルのためにもカバーを描いた。1977年DSMは突然の発作で倒れ、以来彼の人生は劇的に変わった。左半身は歩行時に助けが必要となったが、幸い絵を描く右手は障害もなく以前と同じように筆を運ぶことができた。
 ジャズグラフィックにおける彼の作品の主な展覧会は「ジャズにおけるデザイン」と銘打って「ニューヨーク公共図書館」や「舞台芸術博物館」で 1986 年 4 月開催された。彼の作品の一部は現在も、「アメリカ現代美術館」や「スミソニアン博物館」で見ることができる。彼のレコード・ジャケットは芸術作品と言えよう。1992年 3 月 8 日コネチカット洲ニューロンドンで死亡 89 歳。〔2〕

3.DSM の描いた LP ジャケット

   彼は、チャリー・パーカー、ビリー・ホリデイ、オスカー・ピータソン、カウントベーシー、マイルス・ディヴィス等、ヴァーブ・レーベル初期のジャズアルバムに数々の絵を提供した。初期のLPは現在の12インチ(30cm)ではなく、10インチ(26cm)であった。 
現在のLPと当時のLPを比べるとかなりサイズが異なり小さく見える。しかし、CDに比べるとかなり大きく、見栄えが良い。ここで、実際Charlie Parker with Stringsの1949年最初の10インチLP音源を「CD」、「12インチLP」で較べると、一目瞭然である。左からCD、10インチLP、12インチLP

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 真ん中の 10 インチ LP は、1949 年 11 月 30 日に Parker 最初の With Strings全 6 曲が収録。このアルバムが録音された 1949 年はレコード産業が大きく変革した時期であった。それまでのレコードは 78 回転シングル盤(SP)であったが、その小型化を図った 7 インチシングル盤(ビニール製)、複数曲収録可能な LP 盤(10 インチ)というニューメディアが登場した。このアルバムは SP 盤 3 枚セット、シングル盤 3 枚セット、LP 盤 1 枚ものの、3 種類のメディアでリリースされた。〔3〕
  今や10インチはヴィンテージで入手は困難である。ここでは、2013年 The Verve Music GroupのUMG Recordings Incから発売されたLPを紹介する。12インチLPのため、,これまでの6曲2枚組の全曲をLP1枚に収録されている。

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Charlie Parker with Strings Supervised by Norman Granz CLEF
Records ; Distribution of UMG Recording,Inc.2013

それではこの中から「Just Friends」をリラックスしてお聴き下さい。疲れが取れ癒される事でしょう。



出典 https://www.youtube.com/watch?v=oDoJO_B8j8g&list=PLBZmD4G_qXo7GsYc4wyaXzh8q_SEnwPQ&index=1

DSM の描いたジャケット LP の中からもう 1 点紹介する。多くの作品の中でも最も有名な彼の描いた「ビリー・ホリデイ」の作品である。史上最高のジャズ歌手と言われるビリー・ホリデイ(1915~1959)のジャケットである。彼はビリー・ホリデイの多数のジャケットを書いているが、いずれも肖像が多いがこのジャケットは「裸婦」が描かれ、絵画としても注目されている。

ジャケットのモデルは、ビリー・ホリデイとは無関係、DSM の奥さんとのことである。デザインは逸品、私もこのジャケットが気に入り購入した。勿論オリジナルではなく、スペイン WaxTimeRecords 社の 2014 発売の復刻版である。ビリー・ホリデイ名盤中の名盤復刻アナログ、180 Gram 重量盤 LP である。収録曲は、A 面がオリジナル 4 曲全曲と B 面1-4 がオリジナル曲、5-8 はボーナストラックで収録されている。 節制のない「愛」について歌った Billie Holiday の曲を見事に表現しているアルバムである。
   A面には人種差別を告発した「奇妙な果実」も収録されている。なお、「奇妙な果実」を巡る米当局とホリディの暗闘を描いた映画「ザ・ユナイテッド・ステイツ VS .ビリー・ホリデイ」が2月11日から一部都市で公開された。コロナ禍でもあり上映館は限られ、大坂での7月上映で終了のようだ。

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Billie Holiday at the Philharmonic Wax Time Records 2014
Original recordings produced by Norman Granz.

この中から、皆さんお馴染みの All of Me をお聴き下さい。
映画の中でも、ビリー・ホリデイの代表曲「All of Me」歌唱シーンの映像が公開されている。

   

     出典  https://www.youtube.com/watch? v=sKJEbqUZFAg

4. SHM-CD として復活
 2013 年には、 DSM 生誕 100 年を記念して「デヴィッド・ストーン・マーチン 10インチ・コレクターズ・セレクション」としてヴァーブ・レーベル草創期のレコードジャケットのうち、特に有名な作品を厳選し Universal Music Japan から SHM-CD 仕様「紙ジャケット」で発売された。

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第 1 期、2 期を併せて、「チャーリー・パーカー」、「ビリー・ホリデイ」、「レスター・ヤング」、「オスカー・ピータソン」、「ダル・ファーロウ」、「秋吉敏子」、「スタン・ゲッツ」「バド・パウエル」、「ジョニー・ホッジス」、「バディ・デフランコ」、「ジーン・クルーパ」の豪華メンバーが演奏する 20 アルバムが収録されている。残念なことに、全て絶版入手困難である。

このセレクションには、日本人の秋吉敏子「トシコズ・ピアノ」も含まれている。ここでは、秋吉敏子の SHM-CD 仕様「紙ジャケット」を紹介する。この CD、実は 1953 年 11 月 13,14 日、東京スタジオで録音された初回限定プレス録音盤である。ジャケットを見ると、秋吉敏子の姿はエキゾチックなアジアンドレス。マネック・デーバー/編『ジャズ・グラフィックスー デヴィッド・ストーン・マーチンの世界』の紹介の中でも「小柄なトシコにアジア風のドレスを着せて書いているが、これは明らかに日本の服ではない」と記載されている。なぜなら、DSM は実際秋吉敏子とは対面しておらず、1953 年来日した、ジャズ・ピアニスト「オスカー・ピータソン」に見いだされ急遽録音が行われたのである。(録音の際には、ノーグラン<現:ヴァーブ>のオーナー「グランツ」も同席)。

このため、グランツが帰国後、「日本の女性ピアニスト」という情報だけで、イラストを DSM に依頼した。彼は 1 枚の写真もない状態で書き上げたとのことである。そして 1955 年、この LP の米国発売がきっかけで、日本人ではじめて米国ボストンにあるバークリー音楽院(現バークリー音楽大学)の奨学金を獲得。翌年 1月日本を後にした。
 以後、秋吉の推薦でサックス奏者「渡辺貞夫」がバークリーに入学するなど日本人米国進出の礎の役割を果たした。〔4〕

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トシコズ・ピアノ「限定盤」(SHM-CD) 秋吉敏子 UCCV-9475
Universal Music Japan 2013 年 10 月 価格 ¥ 2,409 絶版

 この CD、オリジナル 10 インチ LP 収録と同じ 8 曲が収録されている。ここでは冒頭で紹介した、Parker の演奏する同じ曲 Laura をお届けして終わります。

   

     出典:https://www.youtube.com/watch? v=bxvknRXfAHQ

なお、秋吉敏子は戦後活躍したジャズピアニストであるが、今なお現役の世界的なジャズ・ピアニストとして活動。グラミー賞に14回ノミネート、1997年紫綬褒章、1999年には日本人として初めてジャズの殿堂(International Jazz Hall of Frame)入りも果たした。今年10月には岩手県盛岡市のバスセンター内のホテルに「秋吉敏子ミュウジアム」が開館。〔5〕〔6〕

   参考文献・URL
1. 今なぜアナログレコードなのか?
https://wni30fioix9p.blog.fc2.com/blog-entry-33.html

2. 『ジャズ・グラフィックス ー デヴィッド・ストーン・マーチンの世界』マネック・デーバー/編 1991 年 2 月 グラフイック社 ISBN 4-7661-0574-5

3. 池上信次 同じ音源なのに 4 週類もジャケットが!ジャケットで音楽は変わる?
サライ 2020/11/10 https://serai.jp/hobby/1010227

4. 小川隆夫著 「証言で綴る日本のジャズ」 2015 年 10 月 駒草出版
ISBN978-4-905447-53-5 秋吉敏子 p.90-111

5. 岩手日報 ジャズ「博物館」始動へ NPO 設立 新盛岡バスセンター内に開設
2021 年 6 月 10 日

6. 日経新聞電子版 盛岡バスセンター、10 月 4 日開業 中心街活性化へ
2022 年 6 月 2 日

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