「カメの旅物語」(その5) 海外への憧れ
2022年8月18日
斉藤 孝
続編(その5)
小さい頃から海外に憧れました。それは地図だけの世界でした。
これまでの海外の旅の想い出について写真を題材にして述べたものですが、プライベートな雑文付き写真アルバムといえます。
アララト山 アルメニア・トルコ
1984年、 私は42歳になりました。東芝でシステム・エンジニアとして16年間、勤めていました。様々な情報システムの設計に関わり非常に多くの実務経験を得ることができました。
血の教会 サンクトペテルブルク ロシア
海外出張を数回も実現し、仕事に満足していましたが、どうしても学術的な研究に挑戦したくなりました。そんな時に大学の指導教授から「推薦の声」がかかりました。
エトナ火山 シチリア島 イタリア
新たに設置する情報関連の女子大の教授職としてです。名古屋にある「愛知淑徳大学」へ奉職することを決心しました。1988年に、初の卒業生が社会に出しました。「テクノレディ」と名付けた女性のシステムエンジニアが誕生しました。
モンテローザ スイス
発泡酒教授と名誉教授
本物が忘れ去られて偽物が、それに取って代わるのが無法なIT時代です。発泡酒のような大学と教授が増えてきました。私もその一員の発泡酒教授かもしれません。年金という捨扶持が支給されますが、大学勤務時代は携帯脳学生を厳しく一喝教育しました。テニスもお酒も弱くなり、涙もろくなりました。
ポンペイ遺跡 ナポリ イタリア
2012年に退職し、現在は中央大学名誉教授として余生を過ごしています。最終講義では「概念理論への回帰」と題して記念講演を行いました。
ゼノビア宮殿 パルミラ シリア
プログラム言語に対して日本語や中国語、英語やフランス語は自然言語と言われます。自然言語は日常の会話で使われますが、ヨーロッパなど外国に行くと様々な自然言語が使われています。
シェンブール宮殿 ウィーン オストリア
私は外国語の会話は得意ではありませんが、外国人が喋っている外国語を特定することが大好きです。
タクラマカン砂漠 敦煌 中国
隣の席で会話を楽しんでいる外国人が喋っているのは、あれはロシア語にちがいない。あのアクセントはスカンディナビアのスエーデン語ではないか。
敦煌莫高窟 敦煌 中国
フランス語やイタリア語などラテン系言語、セルビア語やポーランド語などのスラブ系言語など様々な外国語に接する機会がある海外旅行は楽しみです。
エルミタージュ宮殿 サンクトペテルブルク ロシア
大学を退職してから専門書と学術資料を全て捨てました。私の著作である膨大な論文抜きずりや寄贈書も一切合財処分しました。本箱もロッカーも空っぽになり、知的減量を実現できました。
ベネチア イタリアン
いまでは本も読みたくなく本屋も図書館にも行きたくありません。本から解放されて血圧も正常になり健康的な毎日 です。新聞も読みたくありませんが、非常に興味があるのは週刊誌の新聞広告です。
サンチャゴ・デコンポステーラ スペイン
見出しの付け方には毎度感心しています。ホームレスが岩波新書を読む活字大国の日本です。
三位一体教会 モスクワ ロシア
書籍という小さなスキーマ
人は世界を理解しようとする時、あらかじめ大まかな略図を持っています。それこそが世界を理解する概念の枠組みであるスキーマとなるものではないのか。
エルミタージュ サンクトペテルブルク ロシア
その昔、書籍という小さなスキーマを学びとることをリテラシーといいました。確かなことは、その原語のリテラ(Litera)が表しています。それは文字で表された主題は抽象化された概念であり、いかにして実世界の具体像に対応付けて描くかという文字の解読能力のことでした。
ブハラ ウズベキスタン
喜寿を過ぎ、冥途への旅もまじかな私はもはや思い残すことなぞありませんが・・・。ささやかな過去の栄光を粉飾させる「想い出を飾る」という楽しみだけが残ったみたいです。そもそも「飾る」ような他人に見てもらう豪華な「過去」など有り得ないのですが。未練がましく往生際が悪い。浅ましいことにみせびらかせたい。
サマルカンド ウズベキスタン
高齢になると哀れにもこんなことで喜ぶので情けない。安ものの金縁の額を付けて「想い出を飾る」。自己陶酔で我慢すべき。我ながらはずかしい。
ベローナ イタリア
さすがに80歳もまじかになり体力・気力は衰えました。薔薇手入れや旅行欲にも鈍感になりました。しかも酒量も減少。デジタル操作だけが息抜き趣味なので運動不足になりポッコリ腹姿で醜い。80歳の老プログラマーは待望のデジタル社会を愉しんでいます。
ヒワ ウズベキスタン
DX(デジタル変革)は印鑑や紙の封建社会を砕き、自由平等な新世界を実現しました。しかし孫から優れたPC操作を教えられて危惧することは、デジタル格差が生まれることです。
アブシンベル神殿 アスワン エジプト
シャンパン嫌いのシャンパーニュ 2019年11月
お酒なんでも大好きなカメ(私の愛称)ですがシャンパンだけは心底楽しめません。サイダーみたいな泡がありワインらしくない。私は貧乏人の大酒飲みなのでシャンパン本来の味など分かっちゃいない。日本酒の中で香りが強い吟醸酒も旨く飲めませんね。
タージマハル アグラ インド
ボーヌの「栄光の3日間」
ブルゴーニュ(Bourgogne)の中心にある都市、ボーヌ(Beaune)では11月16日から開催されるワインの祭典を見てきました。ボーヌには鮮やかなモザイク状の瓦屋根の『オテル・デュー(施療院)』やワイン博物館がありました。
ベネチア イタリア
このあたりコート・ドゥ・ボーヌはコート・ドゥ・ニュイとともに黄金の丘(Cote d'Or)と呼ばれ、フランスでも指折りのワイン生産地です。大好きなピノ・ノワール(Pinot Noir)は、赤ワイン用ブドウ品種でブルゴーニュを原産地とします。
プレショウ スロバキア
真冬1月になると花々は少なく、庭は寂しくなります。それでも寒さに耐えて咲いてくれる花々があります。殺風景な庭は黄色のビオラで賑やかになりました。ビオラはスミレの仲間。大柄の花をつけるパンジーよりも可愛らしい。
スフィンクス ギザ エジプト
しかも寒さにも負けず健気に咲いてくれます。小さな黄色のビオラだけが「オントロジの庭」で咲き誇っています。愛らしいビオラにオントロジをつぶやきました。
アクロポリス アテネ ギリシャ
オントロジとは、「概念の庭」
では、「概念」とは、よく聞くコトバですが厳かで肩ぐるしい意味になります。簡単に言えば、カメの流儀や考え方、思想などライフスタイルのことです。
「カメのライフスタイル」と言えば良いのに、少しばかり気取って「オントロジの庭」と呼ぶことにしました。
サントリーニ島 ギリシャ
花咲か爺
「花花・酒酒」の毎日でした。大好きなガーデニングに励み、「花咲か爺」と呼ばれています。パソコン修理、大工、庭仕事、便利屋などの合間、海山自然の中を歩きまわった平穏な一年でした。あらゆるメディアが電子化されていくデジタルメディアの世紀の真っただ中にいます。紙を使う書籍は電子書籍に変身し、文字を有する社会では書籍を読むことは教養とされますが、はたして電子書籍でも教養は変わらないものなのか。
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